ファンドのMIRAI【2019年2月号】~その3

ファンドの特徴

このファンドは、高リスク資産(先進国株式/新興国株式/先進国リート/コモディティ)と低リスク資産(先進国国債/先進国社債/新興国国債/短期債券・キャッシュ等)に分類して、上昇トレンドの高い時は高リスク資産に多く投資し、下方リスクの高い時には低リスク資産に多く投資するバランス型ファンドです。ファンドの運用は三菱UFJ国際投信ですが、実質的にはアリアンツ・グローバル・インベスターズが担当します。

シャープレシオで比較した、ファンドの運用成果は8ファンド中8番目であり、バランス型ファンドの中で、もっとも運用成績が悪いファンドであるといえるでしょう。

収益分配金は、設定来、支払われていません。リスクを低廉に抑えて、資産の効果的な積立を目指したファンドといえるでしょう。

収益分配金がないために、解約しない限り、NISA、iDeCoのキャピタルゲイン課税に関する減税効果はほとんどないでしょう(iDeCoの所得税の総合課税の減税効果ではありません)。

このファンドは、保守的な運用を期待する投資家が、リスクを抑えて、銀行の預貯金の金利以上の利回りを求める場合に適したファンドです。バランス型ファンドの中では、最もリスクが低いファンドに分類されるでしょう。

このファンドに対するコメント

このファンドは、リスクを低減させるために市場が悪化すると思われるときは、比較的早めにディフェンシブなポートフォリオに移行することを明言している。そして、そのとおりこのファンドは、2018年末に、リスク性資産(株式やコモディティ)を15%未満まで減らして低リスク資産(先進国債券、短期債券、キャッシュなど)の比率を85%超に増やすポートフォリオの修正を行った。(「トレンド・アロケーション・オープン足下の運用状況について」2019年1月7日)

もし、市場が悪化して株式市場が大きく下落したならば、このファンドの判断は吉となるはずであった。しかし、1月以降の市場の動きをみると、中国株式は20%以上の値上がり、米国株式も10%以上値を上げているしたがって、リスク資産のウェイトを下げた分だけ市場に追いつけない結果となり、比較しているバランス型ファンド8ファンドの中で最もパフォーマンスが悪いファンドになってしまった。「リスク限定型」と聞くと、よいことばかりイメージしがちであるが、市場が好転したときに取り残されるリスクがあることを認識すべきであろう。

投資した後の管理・点検

投資した後の管理・点検

月次レポートをもとに「かい離」を調べる

投資したファンドの点検はリバランスの際に実施するとよいでしょう。月次レポートや運用報告書で情報を収集して価格の変動の要因を分析します。ファンドの運用に納得がいかないときは、その原因も追究しましょう。自分の投資スタイルとファンドの運用方針が合わないのであれば、そのファンドへの投資を再考したほうがよいということになります。

ファンドの点検の手順

投資したファンドの点検は、リバランスの際に実施するとよいでしょう。具体的には次の手順で点検できます。

  1. 基準価額の変動(騰落率)を確認する
  2. 月次レポートなどで基準価額の変動の理由を確認する
  3. 運用会社の説明に納得がいかなければ投資するファンドの変更を考える

月次レポートなどを参考にすれば、騰落率のデータは掲載されているでしょう。プラスであった、マイナスであったということも大切ですが、ベンチマークが定められているのであれば、ベンチマークと比較し、あるいは、よく似た特徴を持った他のファンドがあれば、そのファンドと比較することも参考になります。

基準価額の変動の理由を開示してくれているファンドもあります。例えば、ドイチェ・アセット・マネジメントの「DWS グローバル公益債券ファンド(毎月分配型)」では、毎月公表されているレポートの中で、ファンドの基準価額がどのような理由(要因)で変動したのか、実績値を公表しています。債券の価格変動によって基準価額が変動したのか、為替の影響によって変動したのか、あるいは、その他の要因によって変動したのか、簡単に理解できるようになっています。

イメージと実際のかい離を追求しよう

イメージしていた運用と、ファンドの実際の運用にかい離がないか確認しましょう。かい離があった場合、その理由もわかるようになると、善後策を考えるときに役立ちます。

  1. イメージしていたものと異なる運用を行うファンドであった(自分が間違えて理解していた)
  2. イメージされる運用成果を達成できないファンドであった(ファンドの運用能力不足)
  3. 運用成果は満足できるが情報が開示されていない(情報開示不足)

などと原因を分類してみると、次の一手を考えるときの重要な手掛かりを見つけることができるかもしれません。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。