家計調査を読み解く~その2

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さらに注目しておきたいのが、税金や社会保険料の非消費支出である。FPの人がキャッシュフロー表を作成するとき、通常は、可処分所得を収入として計上する。だから、改めて支出に含めることはしないのが通常である。しかし、この方法は少し時代遅れになっているのではないだろうか。サラリーマンであれば、税金や社会保険料は隠れたコストなので可処分所得で計算しても問題ないが、独立したり、シニア世代になると、税金や社会保険料は隠れたコストではなくなる。サラリーマンから独立すると、国民健康保険の保険料の割高感を実感することになり、シニア世代には、将来、税金や社会保険料の負担増が求められることになるだろうことが容易に想像できる。

実際に、すべての世帯平均でみれば、税金と社会保険料の負担は、月額で11万円弱である。これらを合計すると合計金額は51.5万円ほどになる。税金と社会保険料の負担は、全支出の2割強になっている。年金や保険は還元される部分があることは承知の上であるが、かなりの金額を負担していることになる。

家計調査の数値を分析すると興味深いことがたくさん浮かび上がってくる。保険料と税・社会保険料の関係もその一つである。2000年以降のデータを見ると、経常収入に占める保険料の割合はほぼ単調に下がってきている。2000年では世帯の収入の7.6%は保険料になっていたわけであるが、2019年後には4.2%にまで下落している。金額でみると、4.2万ほどあった保険料は、2.4万円にまで下がっている。一方、税・社会保険料の比率は、おおむね右肩上がりに上昇している。2000年時点では16%であった負担率が、2019年の時点では19%にまで上昇している。金額では、8.8万円だったものが10.9万円まで上昇している。“保険の節約”によって支払保険料を減らしても、ソーシャルコストが上昇するのであればトータルでは節約になっていないことがわかる。

情報を付け加えると、家計調査で保険料といっているのは貯蓄性の保険の保険料である。第三分野や定期保険の保険料は、費用として「その他の費用」に分類されるしくみである。したがって、家計調査の保険料が下がっているのは、保険自体を減らして保険料自体が下がってきたという可能性と、保険の内容が貯蓄性から保障性の商品にシフトしたという可能性が考えられる。おそらく、そのいずれもが進行したのではないだろうか。

キャッシュフロー表を作成するときに、物事の平均から始めようとするとうまくいかないことが少なくない。そういったときは、基礎となるデータを根本から洗い直してみることも考えるべきだろう。

この記事は、「週刊インシュアランス」に掲載したものを、出版社の許可を得て転載したものです。

家計調査を読み解く~その1

2020年2月に、総務省統計局から家計調査の2019年の家計収支にかかるデータが公表された。ファイナンシャルプランナー(FP)にしても、保険の募集人にしてもその動向は気にかかるところであろう。全国の世帯当たりの1か月の消費支出の平均は、約32万円である。ところが、家計で必要になる費用を32万円として見積もりを立てると、少し見積もりが不正確かもしれない。なぜなら、この住居費の平均値は1.9万円と見積もられているからである。その理由は、ここに含まれる住居費は家賃などであり、住宅ローンで支払われる金額は、消費支出に含まれないためである。住居費の平均値は、家賃などで支払われた費用の合計を、すべての世帯の数で割って算出される。だから、住居費の平均が2万円以下と少し現実離れした数値になるのである。

少しこの数値を補正してみよう。家計調査では、「家賃・地代を払っている人の割合」も同時に公開してくれている。そこで、住居費の平均を求める分母を、「すべての世帯×家賃・地代を払っている人の割合」として修正してみよう。つまり、家賃・地代を支払っている世帯の平均と補正するわけである。この補正で、金額は約10万円と修正される。こうなると、なんとなく実感する数値に近くなるのではないだろうか。補正した値を使うと家計の消費支出は約40万円になる。

(後半に続く)

この記事は、「週刊インシュアランス」に掲載したものを、出版社の許可を得て転載したものです。