雑誌の編集の方と話をしていると、「この時期になると、毎年保険の特集を組むのですが、安定して興味を持ってもらえるので大切なネタです」といわれることが少なくない。節約によって減ったとはいえ、世帯が支払う保険料は平均すれば2~3万円。保険料の支出は大きな支出項目になっていることに変わりはない。加えて、少子高齢化、公的年金への不安などが相まって保険に対するニーズは減っているようには思えない。だから、雑誌の特集で組むと、消費者は買ってしまうというのが本当のところであろう。
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私のところにも、先日、雑誌社の方から連絡があった。『昨年もお願いしたのですが、今年もランキングにご協力いただけませんか』という依頼であった。FP数十名にアンケートを実施して、保険のランキングを作成する。分野ごと、よい保険と悪い保険をそれぞれいくつかあげて、理由を書いてほしい。そういった依頼内容である。ところで、この依頼、実は、無報酬である。FPにお金を支払う必要がないと考えているのか、お金を支払わなくても回答するだろうと考えているのかわからないが、私は、割く時間がなかったので回答しなかった。ちなみに昨年は回答したので、無報酬だから回答しないということではない。
さて、このようにして出来上がった雑誌でも、『公正中立なFPが数十人集まって厳選したよい保険と悪い保険』と銘打ってしまえば、消費者から見ればいかにも納得できるキャッチコピーになってしまう。舞台裏を知っている身としてはなんともやるせない気もする。私が感じるのは、報酬をもらえないのであれば責任を持った回答が減るだろうということである。有償であれば調査するようなことでも、無償であれば調査しないかもしれない。また、FP自身が特定の保険会社の専属代理店をしていたり、保険会社のOB・OGである場合には、その保険会社にバイアスがかかってしまうことが考えられる。さらに、保険商品のランキングが「美人投票化」する可能性も否定できない。「あの有名なFPが推している商品だから・・・」、「そういえばほかの雑誌のランキングでこの商品が上位ランクしていた」というような状況である。美人投票化してしまうと、ランキングは固定化する。あまり固定化してしまうと、本当に良い新商品がランキングされないという逆効果を生む。
※この記事は2013年6月に、週刊インシュアランスに掲載したものです。