アクティブ運用のファンドマネージャーに必要なこと

”あまのじゃく”な性格が求められる

パッシブ運用のファンドマネージャーに求められる資質は国語力ですが、アクティブ運用のファンドマネージャーには追加して、他人と違うことをして平然としていられる決断力が求められます。

パッシブ運用のファンドマネージャーは合理的

図2.18「ファンドマネージャーに求められる能力」の図には、国語力と決断力が併記して書いてあります。そして、パッシブ運用の枠は、国語力のみを囲っています。一方、アクティブ運用の枠は、国語力も決断力も囲ってあります。これは、アクティブ運用のファンドマネージャーには決断力が求められて、パッシブ運用のファンドマネージャーには決断力が求められないことを意味しています。

「決断力が求められないパッシブ運用のファンドマネージャー?」と表現するとちょっと誤解があるかもしれませんね。『パッシブ運用のファンドマネージャーに求められるのは合理的思考の積み上げである』といったほうが適切かもしれません。

アクティブ運用のファンドマネージャは直感的

アクティブ運用のファンドマネージャーは、基本的には逆張りです。割高になった株式を購入しても市場に勝てないし、成長性が見込めない株式を購入してもダメ。バリュー投資を前提にするのであれば、ファンドマネージャーは、株価が安い時に買って、株価が高い時に売り抜ける。これがファンドマネージャーに求められる投資行動です。でも、ファンドマネージャーも人間なので、人と同じような行動をしている方が居心地はよいはずです。それでも、ファンドの超過リターンを挙げるために、自分たちの分析と(ちょっと言い方は不適切かもしれませんが)直感を頼りに、人と違った投資行動が求められます。”あまのじゃく”
な一面が求められるのはこのような理由からです。誤解を恐れずに表現すれば、アクティブ運用のファンドマネージャーに求められるのは直感力だと思います。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

ファンドマネージャーに必要なこと

説明力の高いファンドマネージャーの評価は高い

ファンドを運用するファンドマネージャーに必要な資質は、合理的な 論理能力とそれを支える国語力、さらには、意思決定したことを投資家に適切に伝える情報伝達能力といえるでしょう。ファンドマネー ジャーに求められている資質は、得意な能力ではなく、優秀なビジネ スパーソンとしての能力といえるでしょう。

ファンドマネージャーのイメージと誤解

数年前に、ファンドマネージャーといわれる人たちに会って、「ファン ドマネージャーにとって最も大切なことは何ですか?」と聞いたことがあ ります。独立系のファンドマネージャーから、外資系の運用会社のCIO (チーフ・インベストメント・オフィサー)まで。そして、彼らの回答の収束点は、一番大切な資質は「国語力」ということでした。ファンドマネー ジャーといわれる人たちの仕事は、意外に知られていません。難しい数式 を解いているイメージ、電話で売買を行っているイメージなどがあるかもしれませんが、これらのイメージは適切ではありません。

確かに、難しい数式を解くことや、数値計算が求められる部門もあります。 ただし、そういった仕事はファンドマネージャーの一般的な仕事ではあり ません。つまり、ファンドマネージャーの仕事に数学の知識や能力が、必 ずしも必要ということではありません。

英語はとても大切な能力かもしれません。特に、外資系の運用会社ではコ ミュニケーションの中心は英語ですから、英語ができないと情報を入手できないということになります。社内の情報だけでなく、社外の情報もほとんどが英語で配信されますから、英語はとても大切です。

英語より国語

日本のファンドマネージャーにとってさらに大切なのは、国語です。な ぜなら、投資家の大半は日本語を母国語とする人たちであり、投資家に対する説明責任は日本語で行う必要があるからです。日本語で正確な文章を 書くことができ、日本語を使って運用の成果を正確に伝えることができる 能力が一番大切ということです。

つまり、資産運用に関する意思決定を合理的に行うことができ、そして、 それを正確に伝えることができるというのがファンドマネージャーの必須条件なのです。

もっとも、「資産運用に関する意思決定を合理的に行うことができる」 と、「自分の行った意思決定を正確に伝えることができる」ということは 不可分の関係にあると思います。とすれば、「自分の行った意思決定を正 確に伝えることができる」ファンドマネージャーは、「資産運用に関する意思決定を合理的に行うことができる」ファンドマネージャーであるとい うことになりますね。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。