ファンドと資産運用残高

資産運用残高がパフォーマンスを向上させる

アクティブ運用にしても、パッシブ運用にしても、ファンドの運用は規模の経済が成り立つ世界です。大きな資産残高があれば、運用担当者を増加やすことができるため(アクティブ運用)、ベンチマークと同じような比率で有価証券を購入することが可能になり(パッシブ運用)、ファンドのパフォーマンスを向上させることが可能です。

資産運用は規模の経済が成り立つ

資産運用の世界は規模の経済が成り立ちます。日本の株式に投資する投資信託(ファンド)を考えてみましょう。AファンドとBファンドです。Aファンドは(運用)資産残高が10億円、一方、Bファンドは1,000億円。いずれのファンドもファンドの維持・運営にかかる費用など(信託報酬)が、年間資産残高に対して1%であったとします。Aファンドは年間1,000万円でファンドを維持し、運営しなければなりません。一方、Bファンドは10億円。Bファンドでは余裕を持ってファンドの維持・運営をすることが可能で、また、利益も上げることができそうですね。

アクティブ運用の場合

仮に、Aファンドがアクティブ運用のファンドであったとしましょう。アクティブ運用にも種類がありますが、Aファンドは個別銘柄の割安感を測って投資するバリュー株投資を運用方針に掲げていたとします。そうすると、ファンドは、運用方針に適った割安な株式を見つけ出さなければなりません。企業のリサーチが必要になります。財務諸表上のデータだけではなく、場合によっては、会社を訪問して直接、経営陣などから話を聞く必要があるかもしれません。つまり、手間がかかります。ファンドとしてある程度のパフォーマンスを上げるためには、相応の資金が必要ということになります。

パッシブ運用の場合

パッシブ運用のファンドであったとしたら、どのように考えればよいでしょう?パッシブ運用の基礎となる考え方は、もしベンチマークがTOPIXであったとしたら、TOPIXと同じ比率でファンドも同じ銘柄を保有することがパッシブ運用の原則です。

TOPIXとの乖離を小さくするために、0.1%の単位まで同じ比率にしようと考えたとします。Aファンドの資産運用残高の0.1%といえば、100万円になります。もし、Aファンドが100万円分、ファーストリテイリングの株(51,880円2018年8月28日/単元株100株)を購入しようとすると、まったく購入できません。その結果、Aファンドでは、ファンドの規模が小さいことが原因となり、TOPIXと連動させることができないということになります。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

リスクの説明

「リターン-リスク」または「リターン-リスク×2」が損失の目安

2項モデルのケースを拡大していくと、リスクとリターンの関係を理解することができます。リターンとは実際に起こりうる騰落率の代表値(平均値)になっており、リスクはそのばらつきを表す指標です。そのことから、「リターン-リスク」または「リターン-リスク× 2」を損失の目安とすればよいことがわかります。

拡大した2項モデル

リターンを日本語にすると「期待収益率」、リスクは日本語にすると「標 準偏差」になります。リターンとは、たくさんある経路の代表値になって います。図2.23 は、2.23 と同じケース(リターン2 %、リスク3 %)の場 合の経路の出現回数をグラフにしたものです。横軸が実現した騰落率。縦 軸はその発生する頻度です。もっとも低い騰落率(実際の利回り)は-8% です。もっとも高い騰落率は12% です。しかし、-8% も12% もほとんど 発生しないことがわかります。

リスクとリターンを使った損失の目安の説明

資産運用でリターンとリスクを上手に使って将来の状況を説明するには 次のように説明します。 リターンは将来起こるべき可能性(すべての騰落率)の平均を表してい ます。したがって、リターン2 % というのは、すべてのケースの平均が2% になっているという意味です。そして、すべての騰落率のブレの程度がリスク(標準偏差)になります。「最悪どの程度になるのか?」という 質問があるかもしれませんが、じゃんけんを何度やっても負け続ける可能性があるのと同じで、考えてもきりがありません。そこで、リスクを使っ て説明します。リターンからリスク分だけ離れた範囲を作ります。この範 囲の中に本当の騰落率が落ち着く可能性が68%、リターンからリスクの 2倍離してあげればその可能性は95% です。「リターン-リスク」または 「リターン-リスク×2」が損失の目安と考えればよいのです。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。