日本国債の隠れたリスク

日本国債の隠れたリスクは円高・債券安

日本国債の隠れたリスクは、海外の投資家の日本国債の保有比率が増えることです。その結果、日本国債は米国債やオーストラリア国債と比較される対象になります。国債価格の低下と円高が同時に進行することが、日本国債の隠れた投資リスクになります。

日本国債は誰が保有しているのか

日本国債は誰が持っているのでしょう?答えは、図のとおりです。最大のオーナーは日本銀行です。国債の4割以上は日本銀行が持っているのです。これは、アベノミクスの金融緩和政策の結果です。アベノミクスが悪かったといっているわけではありません。最初に、機動的に採ることができる政策として金融政策を考えたことは、ごく当たり前のことです。ただし、その結果は、日本銀行の資産を膨らませたわけです。

次いで、生保や銀行が続きます。生保や銀行は、運用の中心が日本国債なのです。なぜなら、株式と違って、償還まで保有すれば元本が戻ってくる債券は、リスクを抑えた投資に向いているからです。

さらに、注目してほしいのは、海外投資家です。すでに120兆円(11%)の国債は海外の投資家が保有しているのです。

海外投資家が保有する意味

日本の投資家は日本債券をお金を保管しておく資産とみなしますが、海外の投資家はお金を産み出す資産とみなします。そのように考えて、表4.2を見ていただくと良いと思います。

利回りを見て考えていただきたいのは、

  1. 円ヘッジした米国債の利回りと日本国債の利回りが同じになる(無裁定取引の原則)のであれば、為替は円高に動く必要がある
  2. 為替が円高に動かないのであれば、日本国債の利回りは上昇する(無裁定取引の原則)はずである

ということです。国債の利回りが上昇すると…価格は下がります。これが日本国債の隠れたリスクです。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

外貨建て資産を保有する意味

日本国債に投資しても資産運用にならない

資産運用を行う目的は資産を殖やすことにあります。実際の経済にはインフレがありますから、資産運用の目的を達成するためには、インフレを上回る利回りを確保しなければなりません。日本国債に投資しても資産運用にならない理由は、利回りがインフレを下回るからです。

インフレの予想

為替オーバーレイ戦略やレバレッジを効かせたFX投資など為替に積極的に投資しなくても、外貨建ての資産に投資すれば、為替のリスクを背負うことになります。一方で、『為替に投資するのはこわいから安心な日本の国債で運用したい』というのもよく聞く話です。

結論を先にいってしまえば、日本国債に投資する(ファンドに投資する)という行動は、資産運用と考えるべきではないと思います。なぜなら、将来の金利とインフレの関係を考えると、日本国債で資産を保有していても実質的に目減りするだけだからです。

表は、IMF(国際通貨基金)が行った日米のインフレの予想を示したものです。予想された時点は、2018年4月です。資産運用を考えるのであれば、このインフレ率を超えるような利回りを確保したいところです。

国債の利回り

図は、日米の国債の金利情報から、これから先10年間の国債の予想金利を計算したものです。日本では4年目まではマイナス金利になっています。普通預金に預けてあると、マイナスの金利が適用されることはありませんが、国債に投資するとマイナスの金利になることが考えられます。

表のインフレの情報と比較してみるとよいでしょう。2018年、日本は-0.1%-1.1%=-1.2%、米国は2.6%-2.5%=0.1%。2020年、日本は-0.1%-1.7%=-1.8%、米国は3.1%-2.1%=1.0%となります。外貨建て投資は、低金利の日本から資産を守る手段になることがわかります。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。