外貨建て資産を保有する意味

日本国債に投資しても資産運用にならない

資産運用を行う目的は資産を殖やすことにあります。実際の経済にはインフレがありますから、資産運用の目的を達成するためには、インフレを上回る利回りを確保しなければなりません。日本国債に投資しても資産運用にならない理由は、利回りがインフレを下回るからです。

インフレの予想

為替オーバーレイ戦略やレバレッジを効かせたFX投資など為替に積極的に投資しなくても、外貨建ての資産に投資すれば、為替のリスクを背負うことになります。一方で、『為替に投資するのはこわいから安心な日本の国債で運用したい』というのもよく聞く話です。

結論を先にいってしまえば、日本国債に投資する(ファンドに投資する)という行動は、資産運用と考えるべきではないと思います。なぜなら、将来の金利とインフレの関係を考えると、日本国債で資産を保有していても実質的に目減りするだけだからです。

表は、IMF(国際通貨基金)が行った日米のインフレの予想を示したものです。予想された時点は、2018年4月です。資産運用を考えるのであれば、このインフレ率を超えるような利回りを確保したいところです。

国債の利回り

図は、日米の国債の金利情報から、これから先10年間の国債の予想金利を計算したものです。日本では4年目まではマイナス金利になっています。普通預金に預けてあると、マイナスの金利が適用されることはありませんが、国債に投資するとマイナスの金利になることが考えられます。

表のインフレの情報と比較してみるとよいでしょう。2018年、日本は-0.1%-1.1%=-1.2%、米国は2.6%-2.5%=0.1%。2020年、日本は-0.1%-1.7%=-1.8%、米国は3.1%-2.1%=1.0%となります。外貨建て投資は、低金利の日本から資産を守る手段になることがわかります。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

為替オーバーレイ戦略

為替を独立した資産クラスと考える考え方

為替はコントロールできないものを考えると為替ヘッジ戦略をとりますが、為替はリターンを生じさせる個別の資産だと考えるのであれば為替オーバーレイ戦略という考え方が採用されます。為替オーバーレイ戦略では為替を独立した資産クラスと考えます。

為替への考え方~為替ヘッジあり

為替ヘッジについては、こちらで説明しました。なぜ為替ヘッジを行うのかといえば、為替のリスクが怖いからです。投資家が為替ヘッジを行いたいと考えるのであれば、銀行がそのリスクを引き受けてくれます。たとえば、自動車会社が決算前に日本円での利益を確定させたいのであれば、為替ヘッジを行うことになります。ただし、金利の低い国の通貨と金利の高い国の通貨を、現在と同じレートでヘッジするには相応のコスト(費用)がかかります。

為替への考え方~為替ヘッジなし

為替ヘッジには、通常コストがかかるのでコストを負担したくない。そもそも、株式やREITなどの有価証券に投資するのであれば、原資産(株式やREITなど)のリスクも大きいので、投資家は為替のリスクを含めて投資しているというのであれば、為替のリスクは放置したままになります。これが、「為替ヘッジなし」という状態です。

為替オーバーレイ戦略

さらに、為替を一つの独立した資産クラスと考える考え方があります。これが、為替オーバーレイ戦略です。図を見てください。有価証券のウェイトと書いてある円グラフが、原資産のポートフォリオを表しています。そして、上段の為替のウェイトが為替のポートフォリオを表しています。

ここで原資産の日本株式と日本債券はいずれも円建ての資産です。それぞれウェイトが、25%と22%になっていますから、何もしなければ日本円のウェイトは47%のはずです。ところが、為替のポートフォリオを見ると日本円のウェイトは28%です。一方、外貨建ての資産は、原資産のウェイトより為替のウェイトが大きくなっています。意味するところは、日本円を売って、外貨を保有しておけば、外貨から収益を受け取ることができるという考え方です。 このように原資産と為替を分離して投資を考える戦略を、為替オーバーレイ戦略といいます。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。