ニッセイ出産サポート給付金付3大疾病保障保険”ChouChou(シュシュ)!”を分析する(2)

その(1)はこちらでご覧いただけます日本生命は、21016年10月2日から新商品「ニッセイ出産サポート給付金付3大疾病保障保険”ChouChou(シュシュ)!”」を発売すると発表した。この保険は、保険業法施行規則の改正により解禁された不妊治療を保障する日本ではじめての保険という位置づけである。最初に動画(戦略的保険とは)をご覧いただきたい。

動画1 戦略的保険とは

営業戦略

私が日本生命の営業推進担当であれば、販売の重点は年齢の下限である16歳から20代前半までの女性にターゲットを絞る商品のポジショニングは「第2の学資保険」である。学資保険は現在非常に厳しい状況にある。日銀のマイナス金利政策の余波が、保険の予定利率の引き下げになり、貯蓄性の高い学資保険では投資利回りが大きく損なわれることになっている。この分野の競合は、ジュニアNISAであるが、ジュニアNISAには税制メリットもあり、学資保険の相対的な魅力度は低下し続けている

図表2 営業戦略上のねらい

chouchou-2

そこで、ChouChou(シュシュ)を考えてみたい。年齢の下限は16歳、高校1年生である。16歳程度になると、ジュニアNISAの年齢の上限が考えられることであり、ジュニアNISAの相対的な魅力度は低下する。加えて、この世代の被保険者の場合、保険契約者は親または祖父母になる。たとえば、祖父母からの贈与ということにすれば贈与税の基礎控除の枠内に収めることができ、将来の結婚祝い金の前私にもなり、将来不妊治療が必要になったときの保障にもなる。

考えられる契約のパターン

保険契約者(保険料負担者):祖父母

被保険者:(高校生~20代前半)

契約の理由付け:両親の世代は教育費が増える世代なので、代わりに、祖父母が保険料を負担。10~20年後には、満期一時金を結婚祝い金にしてもらう

税制:月額1万円程度の保険料であれば贈与税の基礎控除の枠内

加えて、この世代の被保険者はChouChou(シュシュ)の契約が満期を迎えた頃(30歳~40歳)に本格的な保険に加入することが予想される。その時に、ChouChou(シュシュ)の満期一時金を、次の保険契約の保険料の一部に充当すること(保険契約の転換)ができれば、保険会社としては現金を支払うことなく、保険契約を継続することができる。もちろんこの状況は会社にとって望ましい状況である。

図表3 ChouChou(シュシュ)のポジショニング

chouchou-3

まとめ

  • ChouChou(シュシュ)は、収益性を維持しながら、会社の引き受けるリスクを抑えた保険である
  • ChouChou(シュシュ)の位置づけは、第2の学資保険。保険料の負担者は親または祖父母

この続きは、ニッセイ出産サポート給付金付3大疾病保障保険”ChouChou(シュシュ)!”を分析する(3)でご覧ください

ニッセイ出産サポート給付金付3大疾病保障保険”ChouChou(シュシュ)!”を分析する(1)

日本生命は、21016年10月2日から新商品「ニッセイ出産サポート給付金付3大疾病保障保険”ChouChou(シュシュ)!”」を発売すると発表した。この保険は、保険業法施行規則の改正により解禁された不妊治療を保障する日本ではじめての保険という位置づけである。最初に動画(戦略的保険とは)をご覧いただきたい。

動画1 戦略的保険とは

戦略的保険

保障内容と会社のリスクヘッジ

最初に、ChouChou(シュシュ)のしくみを確認しておこう。この保険は、

(1)3大疾病・死亡保障

(2)満期保障

(3)出産・不妊治療保障

の3つの部分から構成されている。

図表1 ニッセイ出産サポート給付金付3大疾病保障保険”ChouChou(シュシュ)!”のしくみ

chouchou-1

(1)の部分はほぼ独立してる。保障内容は3大疾病保障定期保険と同じ内容になっている(くわしくは、生命保険文化センターの解説を参照)。不妊治療に関係のない保険が組み込まれているわけであるが、その理由は、会社の収益性の確保にあると推測できる。3大疾病保障定期保険は収益性の高い保険であり、日本で初めての保障となる不妊治療の部分で赤字が出ても、3大疾病保障定期保険でカバーできると考えたのであろう。

会社にとってのリスクヘッジでありそれ自体を否定する気はない。判断するのは消費者である。

会社のリスクヘッジ

  • 収益性の高い3大疾病保障定期保険を組み入れているため、不妊治療保障の部分で赤字が出てもカバーできる

満期一時金もついている。満期一時金は生存していることを条件に受け取ることができるが、出産給付金や特定不妊治療給付金が支払われたときは、「その合計額-5,000円×給付金支払回数」の金額が、所定の金額から差し引かれるしくみになっている。つまり、出産をしたり、特定不妊治療を受けたりしたときには、満期一時金の一部を前倒しで受け取ると考えておけばよい。

満期一時金も会社にとってはリスクヘッジになっている。一つは、不妊治療を行うことを決めてから保険に加入して給付金を受け取ることの防止である。不妊治療を目的とした保険なのに違和感を感じるかもしれないが、不妊治療を行うことを決めて保険に加入する人(=すぐに給付金を受け取れる)と、将来、不妊治療を行うことになったときに給付を受けるために保険に加入する人(=すぐに給付金を受け取るわけではない)が混在すると不平等だという考え方が根底にある。そして、前者のような人が集団で保険に加入すると、保険会社は赤字になってしまう。このこと「逆選択」というが、不妊治療を保障する場合、この逆選択の問題を避けて通ることはできない。そして、日本生命の出した答えが、満期一時金だろう。このしくみを採っておけば、すぐに給付金を受け取っても、それは数十年後に受け取る満期一時金の先取りにしかならないので逆選択がある程度防げるわけである。

会社のリスクヘッジ

  • 収益性の高い3大疾病保障定期保険を組み入れているため、不妊治療保障の部分で赤字が出てもカバーできる

満期一時金には、さらにもう一つの効果がある。それは、「負の責任準備金(ネガティブリザーブ)」が発生することである。おそらく、不妊治療の部分のみを取り出して保険商品を作ると、契約の終期で負の責任準備金が発生する。保険契約者から考えると、負の責任準備金は、これから先に受け取るであろう給付金より、これから先に支払う保険料の方が多い状態を意味している。保険契約者の合理的な判断は、保険を解約することである。そして、そうなると保険会社は予定していた保険料収入がなくなるので損失を被ることになる。しかし、満期一時金を設定することにより、契約の終期になっても保険契約者は、「もう少しで満期一時金を受け取ることができる」と感じるので保険を解約することはなくなる

会社のリスクヘッジ

  • 収益性の高い3大疾病保障定期保険を組み入れているため、不妊治療保障の部分で赤字が出てもカバーできる
  • 満期一時金は、負の責任準備金の問題も解決する

この続きはこちらでご覧いただけます

ad-twitterheader520x260