生命保険と意思決定支援~前半

人生100年時代健康余命などのことばが流行している理由は、思っている以上に長いと思われるシニアの期間に、私たちが不安を感じているからである。生命保険は、長いシニアの期間に直接かかわりを持っている金融商品である。“生涯保障します”と謳える金融商品は、生命保険が唯一無二の存在である。そして、“生涯保障”のために生命保険では、他の金融商品に先駆けて考えなければならない問題もある。意思決定支援もその一つであろう。

1990年代に、リビングニーズ特約という商品が外国からもたらされた。『余命6か月以内と診断されたら、保険金を先にお支払いします』という特約は、保険料が不要なこともあり、発売当初は、生命保険募集人の“キラーコンテンツ”になった。意思決定支援という観点から考えると、リビングニーズ特約は、『意思決定の代理』に該当する。「ご本人(被保険者)は、自分で意思決定ができないと推定されるので、代わりに身内が意思決定を行います」というのがリビングニーズ特約である。

さて、ここ30年ほどで、平均寿命は男女ともに6年ほど伸びている。シニアの期間が昔より長くなったわけである。生涯保障している保険契約に対しても消費者の要望は大きくなっている。生命保険業界も、生命保険協会が「高齢者向けの生命保険サービスに関するガイドライン」を公表するなどして、シニア世代の意思決定について対応をしていることは事実であるが、まだ、十分ではないと感じる。

それは、シニアの意思決定を誰が、どのように代理するかのみが検討され、意思決定そのものを支援するという観点が足りないように思えるからである。

続く

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

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保険業界の契約動向~後半

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さて、日本の生命保険会社(日本社)には「転換」という制度がある。そこで、転換を新契約と同列と考えて、「新契約+転換契約」という指標で比較してみよう。

この指標では、件数ベース、金額ベースともに2016年度、2020年度ともに日本生命がトップになる。第一生命も、2016年度の件数ベースで第7位になっている以外は、すべて、第2位になっている。新契約の金額の比較で上位にランクされた、ソニー生命やプルデンシャル生命は、2020年度、「新契約+転換契約」の比較でも、それぞれ、第3位と第5位にランクインしている。転換は、囲い込んでおいた自社の顧客と新たに契約を締結するもので、保険会社にとっては、まさに顧客の囲い込みに相当する。

日本社各社が、どの程度、転換契約に依存しているのか分析してみよう。ここでは、「転換契約÷新契約」という指標で比較する。

対象となる会社は、日本生命、第一生命、住友生命、明治安田生命、朝日生命、太陽生命、富国生命、大樹(三井)生命、大同生命、アクサ生命、マニュライフ生命の11社である。

金額ベースでみると、2016年度、住友生命など7社では、「転換契約÷新契約」の数値が100%を超えている。2020年度では、第一生命など6社が100%を超えている。転換の制度が、生命保険会社の経営に不可欠な制度になっていることがわかる。

それでは、どの程度の期間で転換を求められているのであろうか。ここでは、「保有契約÷転換契約」という指標で見ることにする。数値が20を切る水準を分水嶺と考えると、2016年度においては、件数ベース、金額ベースともに2社。2020年度は、件数ベースで5社、金額ベースで2社が該当する。

「どのような商品の売れ行きが好調で新契約の業績が伸びた」とか、「平均すると既契約者は〇年ごとに契約を転換している」といった情報が、消費者に届くようになると、保険商品を選ぶ際に、有益な情報になると思われる。

この記事は、週刊インシュアランスに掲載されたものを、出版社の許可を得て転載したものです。保険関係者に好評の生命保険統計号もこちらからご購入いただけます。

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