ダイバーシフィケーション(多様化)

LGBTはマイノリティ

全体の約6%。30人のクラスであれば、少なくとも一人は該当する割合である。この割合は、LGBTに該当する人の割合である。L(レズビアン)G(ゲイ)B(バイセクシャル)T(トランスジェンダー)の頭文字をとってLGBT。LGBTより少し広い概念が性的マイノリティ。LGBTだけでもマイノリティには変わりはない。LGBTに該当する人がクラスに少なくとも一人存在するわけである。カミングアウトしている人はさらに一部の人なので、私たちは、LGBTの人と出会っても意識していない場合が多い。

心の性とからだの性

現在、保険の申込書には「男性・女性」という記入欄がある。多くの保険の場合、保険料率は男女で異なるため仕方がないのかもしれないが、最近、エンディングノートを作っていて、当事者から少し配慮してほしいといわれたことがある。これは、LGBTの中でも、Tに該当する人の悩みである。男性に〇を付けたくないし、女性にも〇をつけたくないということらしい。もっとも、心の性とからだの性の組み合わせを考えると10や20では収まりがつかないらしい。だから、申込書のチェック欄を増やす対応はあまり現実的でない。エンディングノートの性別は、私は、自分で自由に書き込んでもらう方式にした。生まれた時の性別は男性(Male)であったが、自認している性は女性(Female)のケースをMTF(Male To Female)、その反対に、生まれた時の性は女性であったが、自認している性は男性というケースをFTM(Female To Male)という。

保険とLGBT

いずれのケースでも保険に加入するには、少しハードルが高い。加入自体を断ることはできないだろが、当事者の方が安心して情報を開示できる募集人はどの程度いるだろうか。さらに、性別を変更したときの手続きはどうなるのであろう。男女の料率を変更して以後の保険料を変更する。変更時点で責任準備金の差額を清算するという手続きで問題ないと思うのだが、実際は、あまり受け付けてもらえないらしい。ホルモン注射などの治療を受ける可能性があるのでリスクが高まると説明される場合もあるらしい。しかし、この説明は合理的でない。会社がリスクと考えるのであれば、最初から告知を求めておく必要があるように思う。これは、職業が変わってリスクが上昇しても保険料率を変更しないのと同じだと思うがいかがであろう。

そのほか理由として考えられるのは、ITシステム上の問題である。そもそも性別は変更するような手続きが用意されていないのであれば、これは対応が難しいだろう。といっても、内部システムの不具合を理由に、顧客の申し入れを断るというのも合理的でない。

その他、LGBT全体の問題として、保険金受取人の問題も挙げられる。一部の保険会社では、パートナーを保険金受取人として指定することを認めているようであるが、全体的な動きにつながっていない。保険会社が認めていない場合は、保険金受取人の変更を遺言にしておき、被保険者死亡後に保険金受取人を変更する通知を行うことが考えられる。ただし、遺言によらずとも実質的なパートナーであれば保険金受取人の変更を認めるのが合理的であると思えるがいかがであろう。

ダイバーシフィケーションの意味

さて6%という数字に戻ろう。マイノリティといいながら6%という数字はかなり大きなマイノリティである。しかし、マイノリティはLGBTだけではない。厚生労働省の統計によれば、障がい者も6%くらいの数になっている。LGBTと障がい者の重複を無視すれば、合計すると12%。こうなるとマイノリティとはいえないような数字になってくる。ダイバーシフィケーション(多様化)とはマイノリティのために何かをしてあげることではなく、マイノリティの要望にもしっかり対応して、信頼を得ることによって、市場の規模を維持することなのだと思う。

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