ファンド(投資信託)に投資したお金と情報の管理

資産は受託銀行が、情報は販売会社が管理

ファンドに投資したお金は、販売会社(証券会社や銀行など)から受託銀行(信託銀行)のファンド専用口座に振り込まれます。この口座は受託銀行自身の資産とは分別して管理されています。また、ファンドでは投資家の個人情報は、販売会社が管理し、委託会社や受託銀行に提供されることはありません。(委託会社や受託銀行が販売会社を兼ねているときは除きます)

ファンドの資金管理

投資家(消費者)が投資信託(ファンド)に投資したお金(買付代金)は販売会社から、委託会社を経ることなく、受託会社(銀行)に直接振り込まれます。受託銀行にはファンドの専用口座が開設されています。ファンドのお金はここで一元的に管理されています。
もし、委託会社が倒産しても、ファンドの資産は受託銀行で保管されていますから安全に守られています。受託銀行が倒産したら、受託銀行には分別保管が義務付けられており、預かった資産と自己の資産を混同できないようになっています。したがって、受託銀行自身が債務超過に陥ったとしても、ファンドの口座は安全に守られているという仕組みです。

ファンドの情報管理

お金の動きとは別に情報も流れます。「Aさんが、Bファンドを1万円購入した」とします。Aさんに関する情報は、販売会社から外部に流れることはありません。投資家AさんがBファンドを購入したという情報は、販売会社は知っていますが、運用会社(委託会社)や信託銀行(受託銀行)は知らないのです。
運用会社や信託銀行に送られる情報は、
  • 1万円(手数料を差し引かれるときは差し引いた後の金額)が受託銀行に送金されたということ
  • 売買の口数(ファンドは口数単位で取引されます)

です。

この記事について

杉山 明

ブログでお知らせしましたが、「投資信託エキスパートハンドブック」が絶版になることが決まりました。とても残念なのですが、せっかくの機会なので、視点を変えて作り変えてみようと思いました。「投資信託エキスパートハンドブック」は出版社からの要請もあり、金融機関勤務者向けの視点から書かせていただいたのですが、今度は、一般の消費者の視点から書かせていただこうと思っています。

PDF版もあわせて配信していく予定です。PDF版は、より書籍に近く、図表は作り直してきれいなものになっています。

ドルコスト平均法だけで大丈夫!?

ドルコスト平均法は非効率になる場合がある

ドルコスト平均法は、市場が変動を繰り返しているときに資産を積立てる手段として効果があります。しかし、保有している資産を定期的に取り崩すときにはドルコスト平均法を使うと非効率になります。

ドルコスト平均法は積立するときに有効

ドルコスト平均法とは、「毎月一定の金額を購入していけば、価格の安いときに多くの口(株)数を購入することができ、価格が高いときには少ししか購入することができず、全体で見れば平均購入単価を低く抑えることができる」という方法です。市場が値動きを上下に繰り返し、その変動するタイミングを事前に予測することができないのであればドルコスト平均法は機能します。これは分散投資の場合と同じ考え方です。市場を完全に予測できないのであれば、分散投資やドルコスト平均法は有効な方法なのです。

解約するときにはドルコスト平均法を使わないほうが賢明

ところで、ドルコスト平均法は使わないほうが好ましい局面があります。それは、保有している資産を定期的に取り崩している局面です。シニアライフなどで、保有しているファンドを毎月解約していくイメージです。例を挙げて考えてみましょう。

これは毎月3万円ずつ保有しているファンドを解約したときの金額を表したものです。定額方式ですからドルコスト平均法です。最終的には、累計解約金額を累計解約口数で除して効果を求めています。この場合は1.03。投資金額1円が1.03円になったことを表しています。
一方、毎月、3万口ずつ解約したケースを見てみましょう。

このケースでは、6月までの3か月間で1.10になっています。投資金額1円が1.1円になって戻ってくるわけですから、ドルコスト平均法を採用したより効率がよいことがわかります。
これは、ドルコスト平均法では、基準価額が低いときでも同じ金額を解約するため、多くの口数を解約しなければならないからです。積立を行うときにはとても役に立つドルコスト平均法ですが、定期的に資産を取り崩す場面では、ドルコスト平均法を使わないほうが賢明なのです。

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