ファンドの収益分配金はこうして決まる

ファンドの収益分配金はこうして決まる

一定の制約のもと安定した分配金を目指している

たくさんの収益分配金を支払うファンドは投資家に歓迎されます。 一方、ファンドは収益のすべてを分配金として支払うことができるわ けではありません。そうした環境の下、販売会社の意向も尊重しながら、できるだけ安定した収益分配金を支払うようにしているというのが、運用会社の担当者の本音ということになるでしょう。

投資家は分配金が好き

日本では、投資家がファンド(投資信託)を購入する際の決定要因の一 つは、間違いなく収益分配金です。

ところで、長期投資を考えると、収益分配金を受け取るよりも収益分配金 を受け取らずに元本部分が増えるほうが、「複利の効果で資産が効率的に殖えるのでありがたい」と主張する人もいます。この考え方は、まったく 合理的なのですが、人の投資行動というものは合理的でないところにも特徴があるものです。合理的ではないのですが、株式にしてもファンドにしても、配当(収益分配金)が多いほうが好まれるのです。

インカムゲインとキャピタルゲイン

ファンドを運用する側、つまり、運用会社ではどのようにして収益分配金の水準を決めているのでしょうか。実は、収益分配金の原資にすることができる収益には2種類あります。

それは、インカムゲインとキャピタルゲインです。債券でいえばクーポン 収入はインカムゲイン、株式やREIT などでは配当がインカムゲインにあ たります。インカムゲインはすべて収益分配金の原資にしてよいということが目論見書に記載してあります。一方、キャピタルゲインはファンドに 繰越欠損金があるときはこれを埋め戻してから、その残りを収益分配金の 原資にしてもよいという決まりになっています。キャピタルゲインは、収 益分配金の原資にするときに制限がついているわけです。

できるだけ安定した分配金を目指す

分配金に関する制約の下、運用会社は収益分配金の水準を決めます。株 式の配当も同じですが、投資家は収益分配金(配当)の水準(金額)が一定だと安心する傾向があります。そのため、運用会社としてはできるだけ 収益分配金の金額が一定の金額で推移するようにしたいという思惑が働き ます。

また、販売会社も重要です。特に、専用ファンド(販売会社が1社のみ) の場合には、販売会社の意向も反映されると考えた方がよいでしょう。

 

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

繰上償還に関心を持とう~その2

コーラブル債に投資するファンド

コーラブル債というタイプの債券があります。通常の債券より少し利回りが高いので、コーラブル債に投資するファンドはパフォーマンスがよく見えます。でも、コーラブル債には繰上償還リスクがあります。コーラブル債に投資するファンドでは、特に、繰上償還に気をつけましょう。

コーラブル債に投資するファンド

ファンドの繰上償還は、ファンドの規模だけでなく、ファンドの投資している証券によってももたらされます。コーラブル債というタイプの債券があります。コーラブルとは、コールとブルに分けて考えるとわかりやすいです。コールというのは“売る”というものです。ブルは可能を表します。つまり、“売ることができる”というのがコーラブルの意味です。だれが売ることができるのかといえば、債券の発行体です。

つまり、債券の発行体がいざとなったら売ることができる債券が、コーラブル債です。債券に償還条件が付いていると考えるとよいでしょう。ただし、それだけだと投資家にとってマイナスにしかなりません。そこで、コーラブル債は少しだけ高い金利が設定されるのです。保有している債券の金利が高いと、ファンドもたくさんの収益分配金を支払うことができる。そのため、コーラブル債に投資するファンドはパフォーマンスがよくなるのです。

コーラブル債の価格と繰上償還リスク

コーラブル債はどのような時に償還されるのでしょう。それは、金利が下がった時です。金利が下がると、債券の発行体は金利の高いコーラブル債を償還してしまって、新たな金利の低い債券を発行してしまうほうが金利の負担が少なくて済むのです。

一般の債券を考えると、金利は低いほうが価格が上昇します。なぜなら、将来のキャッシュフローを割り引くときに、金利が低いほうが金額が高くなるからです。国債をイメージして、金利が低い時は景気の悪い時、だから、株式より債券のほうが人気が高い。だから、債券の価格が高くなる。そう考えても構いません。

ファンドで考えるのであれば、通常、債券に投資するファンドは金利が下がると価格が上がるといえます。でも、コーラブル債に投資しているファンドの場合、金利が下がりすぎると繰上償還のリスクが発生するために、逆に価格が下がることになります。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。