ライフプランニングに役立つ資産運用の考え方(リメイク中)【第1章-3】

市場を動かしているものは!?

コンセンサス(予想)と現実のギャップが市場を動かす

多くの投資家は経済統計などを先読みする予想を行います。投資家の予想の平均が市場のコンセンサス。市場のコンセンサスと現実が大きく異なると市場は大きく影響を受けることになります。
この影響を積極的に使おうとするのがバリュー投資です。そして、ある程度この影響を利用するのがドルコスト平均法です。アクティブ運用にとってもパッシブ運用にとってもコンセンサスを知っておくことはとても大切です。

市場のコンセンサス

株価を決めるものは何か?誰も解くことのできない永遠の課題ですが、株価に影響を及ぼす大きな要因として、現実が予想と違っていることが挙げられます。『失業率が悪化したから株価が下がる』と考えるのではなく、『失業率が予想していた水準より上がったから株価が下がった』と考えるのです。
この予想、少し気取った言い方をすると「コンセンサス」という言葉になります。「市場のコンセンサス」というのは、「市場の予想」ということなのです。そして、世界最大の株式市場である、米国の株式市場では実にたくさんの市場の予想が出回っています。労働省の労働統計が出る前には、民間会社の労働統計が公表され、さらにその前には予想値が出回っているのです。

びっくり指数

さらに、米国では、実際の数値と予想値の乖離までもが指数化されて公表されています。かんたんにいうと「びっくり指数」です。「現実のデータは予想よりよかった」というのはよい意味でのびっくり。逆に、「現実のデータが予想以下であったら」悪い意味でのびっくり。びっくり指数の本名は、” Citigroup Economic Surprise Index”といいます。
このびっくり指数が悪化すると、どうも経済統計が思っている水準を下回っているということになります。株式市場全体もなんとなく調子が悪くなっていることが一般的です。

バリュー投資

こういうときに株式を購入するタイプの投資方法を「バリュー投資」といいます。『経済が思っている以上に悪化しているのでは?』と周りの人が思っているときに、投資するわけですから勇気のいる投資方法ですね。でも、株価の適正水準を勘案して、実際の株価が割安な水準に放置されているときに購入するというのがバリュー投資の原則です。
バリュー投資の基本は、“逆張り戦略”なのです。

ライフプランニングに役立つ資産運用の考え方(リメイク中)

リメイク中の理由を最初に…

杉山 明

ブログでお知らせしましたが、「投資信託エキスパートハンドブック」が絶版になることが決まりました。とても残念なのですが、せっかくの機会なので、視点を変えて作り変えてみようと思いました。「投資信託エキスパートハンドブック」は出版社からの要請もあり、金融機関勤務者向けの視点から書かせていただいたのですが、今度は、一般の消費者の視点から書かせていただこうと思っています。

PDF版もあわせて配信していく予定です。PDF版は、より書籍に近い、きれいなものになっています。

市場の取引価格は絶対的なものではない

市場の取引価格は絶対的なものではない

価格の値動きのある株式や債券、そして投資信託などをリスクのある金融商品といいますが、これらの価格は絶対的なしくみに基づいているわけではありません。市場の折り込んだシナリオによって価格付けされているのです。だから、市場の折り込んだシナリオを知ることはとても大切です。

リスクのある商品は難しい

将来の受け取る利息の金額が決まった預貯金や、受け取る保険金の金額が確実に決まっている(円建ての)生命保険と異なり、投資信託(ファンド)や外貨建て商品などリスクのある商品は、受取る金額が確定していません。 わたしたちは、リスクのあるモノに投資する意味や方法を、学校で習ってきたわけではありません。 だから、リスクのある商品に投資しようと考えるとき、どうしても確実なモノに頼りたいと思うようになります。

そういったときに、金融機関が用いる説明方法の一つが過去のデータを持ち出すことです。例えば、「このファンドは過去1年間で基準価額が8,000円を割り込んだことがありません」、「オーストラリアドルは過去1年間で60円より円高になったことはありません」といった説明です。

過去のデータを使った説明には致命的な欠点がある

過去のデータを持ち出す説明には致命的な欠点があります。それは、過去の出来事が将来の出来事を保証しているわけではないことです。 「あるファンド(投資信託)が、過去に一度も価格が8,000円を下回ったことがない」と説明されていても、それはこのファンドが将来8,000円以下にならないことを保証しているわけではありません。そこで、覚えておきたいのは、将来の出来事を考えてみることです。

シナリオを考えることができれば1ランクアップ

株式市場や債券市場では、市場が織り込んでいるシナリオというものがあります。そのシナリオを知ることが一番大切です。メインとなっているシナリオを理解すれば、そのシナリオとおりにならなかったときのことが考えられます。 株式や債券などその価格が変動するものは、投資家の思惑で価格が付けられているのです。絶対的な価値が価格となっているのではなく、相対的な価値が価格となっているのです。

複数のシナリオを用意しておく

PDF版はこちらでダウンロードできます。

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