相談、その先は教育(1)

相談業務とは何だろう?『消費者からの質問に対して答えること、それが相談業務』というのが狭義的な相談業務の定義であろう。相談を受ける人はプロの人、相談をする人は消費者。そういう位置づけである。プロの人だから、聞かれることにできるだけ正確に回答しなければならない。どれだけ回答できるかが相談者としての力量である。もし、そう考えるのであれば、コンピューターに相談業務をさせた方がよい。現在であれば、AI機能を搭載したコンピューターを使うことができる。AI機能を搭載しておけば、過去の質問とその回答のノウハウを踏まえて、より最適な解を、より短時間で提供してくれるだろう。開発にコストはかかるだろうが、コンピューターには人件費はかからない。メインテナンス費を受け容れれば、労働時間も気にせず相談業務を行ってくれるだろう。

よく考えてみると、何か質問があって、それに対して答えが一つであれば、相談の必要はないのかもしれない。本当に相談が必要なのは質問があって、やることはわかっているのだけど、それをやり始めるきっかけがない(解決策の実践)それに対して選択肢がいくつかあってどの選択肢を選べばよいのかわからない(意思決定)どのような選択肢があるのかわからない、そもそも、どのような質問が必要なのかわからない(問題の明確化)などに細分化されるだろう。

解決の実践ということに対する相談業務は、コーチングの分野であろう。人は誰かに支援してもらっていると安心するし、がんばることができる。意思決定という意味での相談業務は、一般的にイメージされるFP相談ではないだろうか。しかし、実際は、意思決定で迷っている人はあまりいないように思う。自分で選択肢を準備できて、その選択肢を合理的に比較できるように並べることができる人であれば、意思決定に迷う余地はない。人は、不確定な情報が多いほど迷うものであるが、「合理的に比較できる」状態にあるのであれば、不確定な情報は少なくなっている。後は、自分の意思決定を肯定してほしいだけである。社長が、自分の意思決定を周りの人に支持してもらいたい。そういったイメージではないだろうか。

(続く)

ダイバーシフィケーション(多様化)

LGBTはマイノリティ

全体の約6%。30人のクラスであれば、少なくとも一人は該当する割合である。この割合は、LGBTに該当する人の割合である。L(レズビアン)G(ゲイ)B(バイセクシャル)T(トランスジェンダー)の頭文字をとってLGBT。LGBTより少し広い概念が性的マイノリティ。LGBTだけでもマイノリティには変わりはない。LGBTに該当する人がクラスに少なくとも一人存在するわけである。カミングアウトしている人はさらに一部の人なので、私たちは、LGBTの人と出会っても意識していない場合が多い。

心の性とからだの性

現在、保険の申込書には「男性・女性」という記入欄がある。多くの保険の場合、保険料率は男女で異なるため仕方がないのかもしれないが、最近、エンディングノートを作っていて、当事者から少し配慮してほしいといわれたことがある。これは、LGBTの中でも、Tに該当する人の悩みである。男性に〇を付けたくないし、女性にも〇をつけたくないということらしい。もっとも、心の性とからだの性の組み合わせを考えると10や20では収まりがつかないらしい。だから、申込書のチェック欄を増やす対応はあまり現実的でない。エンディングノートの性別は、私は、自分で自由に書き込んでもらう方式にした。生まれた時の性別は男性(Male)であったが、自認している性は女性(Female)のケースをMTF(Male To Female)、その反対に、生まれた時の性は女性であったが、自認している性は男性というケースをFTM(Female To Male)という。

保険とLGBT

いずれのケースでも保険に加入するには、少しハードルが高い。加入自体を断ることはできないだろが、当事者の方が安心して情報を開示できる募集人はどの程度いるだろうか。さらに、性別を変更したときの手続きはどうなるのであろう。男女の料率を変更して以後の保険料を変更する。変更時点で責任準備金の差額を清算するという手続きで問題ないと思うのだが、実際は、あまり受け付けてもらえないらしい。ホルモン注射などの治療を受ける可能性があるのでリスクが高まると説明される場合もあるらしい。しかし、この説明は合理的でない。会社がリスクと考えるのであれば、最初から告知を求めておく必要があるように思う。これは、職業が変わってリスクが上昇しても保険料率を変更しないのと同じだと思うがいかがであろう。

そのほか理由として考えられるのは、ITシステム上の問題である。そもそも性別は変更するような手続きが用意されていないのであれば、これは対応が難しいだろう。といっても、内部システムの不具合を理由に、顧客の申し入れを断るというのも合理的でない。

その他、LGBT全体の問題として、保険金受取人の問題も挙げられる。一部の保険会社では、パートナーを保険金受取人として指定することを認めているようであるが、全体的な動きにつながっていない。保険会社が認めていない場合は、保険金受取人の変更を遺言にしておき、被保険者死亡後に保険金受取人を変更する通知を行うことが考えられる。ただし、遺言によらずとも実質的なパートナーであれば保険金受取人の変更を認めるのが合理的であると思えるがいかがであろう。

ダイバーシフィケーションの意味

さて6%という数字に戻ろう。マイノリティといいながら6%という数字はかなり大きなマイノリティである。しかし、マイノリティはLGBTだけではない。厚生労働省の統計によれば、障がい者も6%くらいの数になっている。LGBTと障がい者の重複を無視すれば、合計すると12%。こうなるとマイノリティとはいえないような数字になってくる。ダイバーシフィケーション(多様化)とはマイノリティのために何かをしてあげることではなく、マイノリティの要望にもしっかり対応して、信頼を得ることによって、市場の規模を維持することなのだと思う。