要因分析

運用の方針結果を重ね合わせて分析する

アクティブ運用のファンドのパフォーマンスを詳細に分析するとき には要因分析が用いられます。ベンチマークに対しての超過収益を、 資産配分要因、銘柄選択要因として分解します。ファンドの運用方針 を重ね合わせると、運用結果が運用方針を実現したものになっている かを検証できます。

要因分析とは

アクティブファンドの良し悪しを測る方法の一つに要因分析があります。要因分析とは、ファンドのパフォーマンス(騰落率)がどのような要因によってもたらされたのかを示すものです。これは企業が決算発表などで開示する、業績(利益)の増減の要因分析に似ています。企業の業績分析では、売上が増加した、宣伝広告費の圧縮を図った、等々の理由が積み上げられます。その結果、投資家は、当期の純利益がどのような理由で、どの程度増減したのかを知ることができます。

ファンドにおいても同じことが行われています。それが要因分析というものです。ファンドの基準価額の増減(パフォーマンス)の変動の理由を、原因にまでさかのぼって分析するというものです。

資産配分要因と銘柄選択要因

数値を使った例で見てみましょう。ここでは、ファンドのパフォーマンスの基準となるベンチマークのリターンが4.0% となっています。よりイメージを具体化させるために、このファンドは、日本株式に投資するファ ンドで、TOPIXをベンチマークに採用していると考えましょう。そう考えると、4.0% はTOPIXのリターンになります。

資産配分要因は、業種ごとの投資比率の調整によってもたらされた超過収益(リターンの上乗せ分)を表しています。例えば、ファンドマネージャーが、輸送用機器は見通しがよくないのでTOPIXより低い割合で保有し、その代わりに、小売業はTOPIXより高い割合で保有しようという判断をしたとします。その考えどおりに市場が動くと、資産配分要因はプラスになり、そうでなければ資産配分要因はマイナスになります。

銘柄選択要因とは、個別銘柄からもたらされるリターンです。例えば、このファンドがHONDAの株式を、TOPIXの割合より多く保有したとしましょう。輸送用機器の銘柄の平均よりHONDA株の上昇率が高いと銘柄選択要因はプラスになります。その逆の場合は、銘柄選択要因はマ イナスになります。

手数料はファンドの運用能力と切り離して考えるとよいでしょう。ファンドの運用能力そのものは、「d.手数料控除前リターン」と「a.ベンチマーク」の差と考えます。そして、どの程度のコストでファンドを管理
できるかという、ファンドの管理能力までも含めた全体のパフォーマンスを測るときは、「f.手数料控除後リターン」と「a.ベンチマーク」の差と考えればよいでしょう。ちなみに、基準価額の騰落率は、「f.手数料控除後リターン」です。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。

パフォーマンスの評価方法

過去は定量分析、将来は定性分析で評価

パフォーマンスの評価には定量分析と定性分析があります。過去の パフォーマンスについては定量分析、将来のパフォーマンスの可能性 については定性分析が役に立ちます。定量分析の資料はウェブサイ トなどにも公表されていますから、参考にできます。

パフォーマンス評価は2つの方法がある

パフォーマンス(運用成果)を基準にファンドを選びたいというニーズは とても高いと思います。実際にパフォーマンスを基準にファンドを選ぶにはどうしたらよいのでしょう。ファンドのパフォーマンスというと実は2 つの意味が含まれています。

一つはこれまで実績としてあげられたパフォーマンスです。そして、もう一つはこれから先のことです。これから先、どのようなパフォーマンスをあげる可能性があるのかという意味でのパフォーマンス。私たちは、この二つを区別しておく必要があります。

過去のパフォーマンスは定量分析

過去のパフォーマンスは、ファンドの定量的なデータから分析することが可能です。基準価額と収益分配金の支払いについて過去のデータがあるのであれば計算することができます。 アクティブ運用のファンドであれば、シャープレシオと情報レシオ、 パッシブ運用のファンドであればトラッキングエラーが、もっともわかりやすいでしょう。

最近では、運用会社が独自に定量的な指標を開示してくれている場合もありますし、ウェブサイトから過去の基準価額や収益分配金のデータをダ
ウンロードできるようになっている運用会社も少なくありません。

将来のパフォーマンスは定性分析

さらに重要視されるのは、ファンドのこれからのパフォーマンスです。
正確にいうと、良いパフォーマンスをあげるだけの能力がファンドにあるのかということがファンドの評価ポイントです。この部分は、事後的に定
量的なデータをチェックすればよいというのではなく、定性的な部分を内部からチェックする必要があります。
機関投資家の年金基金などが運用の委託先を決めるときは、ファンドや運用会社の運用能力を定性的な側面からチェックすることが普通です。例えば、運用担当者が何人いるのか、主要な運用担当者の運用者としての経
歴は十分か、顧客に不利益な状況が発生しないようにコンプライアンスが機能しているかなどが評価項目となります。

この記事は、「投資信託エキスパートハンドブック」のリメイク版の一部です。